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THE SECOND BOOKE of Songs or Ayres [楽譜]

センニンさんが昨日John Dowlandの楽譜の記事を書かれていました。疑問に対してお答えできるか分かりませんが、オリジナルのファクシミリを使って記事にしてみたいと思います。

イギリスのリュート奏者/作曲家John Dowland(1563-1626)が1600年に出版しましたリュート・ソング集"The Second Book of Songs or Ayres"についてです。

センニンさんが購入されたのは、LondonのStainer&Bell社の楽譜ですが、オリジナルの楽譜を(割と)忠実に現代譜に直したもので、当時の習慣も垣間見ることができて興味深いものです。

センニンさんの記事では茶色の表紙ですが、私が持っているものは赤です。中身は同じでしょう。

The Second Book of Songs-01.jpg

さてここからは、オリジナルのファクシミリで話を進めていきたいと思います。

表紙の一部です。これは、Stainer&Bell社の楽譜には載っていません。

The Second Book of Songs-02.jpg

タイトルが、"THE SECOND BOOKE of Songs or Ayres"となっていますが、"BOOK"が"BOOKE"、"Music"が"Musick"等いくつかの綴りが現代のものと異なります。"s"の活字も特徴的です。また、"J"が"I"と表記されています。

さて、次はDowlandによる献呈の言葉です。

The Second Book of Songs-03.jpg

ここでも、"John Dowland"が"Iohn Dowland"と表記されていますね。拡大します。

The Second Book of Songs-04.jpg

次に、Gerge Eastlandによる巻頭の言葉が続きます。

その冒頭に、この曲集を献呈されたLady Lucie Bedfordの名前を使った詩が載っています。韻を踏んでいますね。

The Second Book of Songs-05.jpg

"Lute"が"LVte"と綴られていますね。当時の楽譜を見ると"U"に"V"が使われています。あとで出てきますが、"U"と"V"は逆に使われています。

2曲目の"Flow my tears"ですが、第1セクションの部分を見ていきましょう。

The Second Book of Songs-06.jpg

歌詞の部分で特徴的なのは、単語の綴りが現代と異なるものがいくつかあるということです。"forever"が"foreuer"、"me"が"mee"、"her"が"hir"、"live"が"liue"、"forlorn"が"forlorne"、"Down"が"Downe"、"despair"が"dispaire"となっています。

オリジナルの楽譜に忠実と書きましたが、Stainer&Bell社の楽譜でも歌詞の単語の綴りは現代のものに書き直してありますね。

音符の部分については、最初の1小節に2小節分の音符が書かれています。想像ですが、現代表記では二分音符2つが小節線をまたいでスラーで繋がるところですが、全音符で書かれているために小節線が引けなかったのでしょうか。

あと拍子記号ですが、現代表記では4/4拍子となるところを、歌の部分は2/2拍子、リュート伴奏は4/4拍子で書かれています。(音価を表す)音符の書き方が、歌とリュートのタブ譜で異なるためだと思われます。

現代表記では、歌の二分音符を四分音符、リュートのタブ譜の八分音符を四分音符と読み替えるのが一般的でしょうか。

リュートを始めた頃、タブ譜の音価を表す記号には随分戸惑いました。でも、慣れればそんなものかと思えるようになりました。

オリジナル譜と現代表記に書き直された譜面の違いは、小説を原書で読むのと翻訳で読む違いに近いものがあるような気がします。

本日の練習:F.CuttingのGalliardとJ.DowlandのLachrimae antique Pavin。

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奇士

こんばんは。

Wはダブル・ユーですよね。
何時ごろから現在のようなUとVの使われ方になったんでしょう?

"s" は普通の"s"が使われたり"∫"が使われたり、また"f"みたいなのもありますね。
また"c"は普通のcの他に筆記体の"E"みたいなのも見かけます。
この使い分けには何か意味があるのかしら・・・
by 奇士 (2010-06-11 00:12) 

雨香

何度も読んだのですが、私にはタブ譜を現代表記になおすなんて・・・
永遠に無理です。普通の楽譜すら、黒いとクラクラしてしまうのに。
原書って表現わかりやすいです!まさに原書ですね。
nyankomeさまは流石です!
by 雨香 (2010-06-11 00:12) 

nyankome

美亜さん
niceありがとうございます♪

+kさん
niceありがとうございます♪

奇士さん
コメントありがとうございます♪
センニンさんのところにもありがとうございます。
この辺りのことには疎いので、調べてみたいと思いますが、奇士さんにも分からないことが出てくるかどうか。

雨香さん
nice&コメントありがとうございます♪
必要に迫られたらできるようになるものだと分かりました。(^_^;)
「源氏物語」で例えると、手書きの写本とそれを現代の活字で出版したものと、現代語に翻訳したものの違いがありそうです。
Stainer&Bell社の楽譜は2つ目に当たりますね。

genpatiさん
niceありがとうございます♪

xml_xslさん
niceありがとうございます♪

doraさん
niceありがとうございます♪
by nyankome (2010-06-11 01:08) 

Caelum

日本語の古典に出てくるような、歴史的仮名遣いみたいな
感じなのでしょうか、興味深いです!
楽譜の表記法も、色々な問題を解決してゆく中で、現代のような
記法に辿り着いたのかなぁ…なんて、想像が膨らみます('ー`)
by Caelum (2010-06-11 03:10) 

Daikon

現代の楽譜だと、楽譜を買ってきて
そのまま演奏するだけなのですが、
古楽は色々と考えさせられて面白いですね。

確か、フランスのギターの名器
ブーシェのラベルも「U」のところに「V」が
使われていたのを思い出しますね。
「BOVCHET」
by Daikon (2010-06-11 06:22) 

hirochiki

オリジナル譜と現代表記に書き直された楽譜の違いは、比べてみると色々とあるものなのですね。
単語のつづりが異なるというのも、興味深いですね。
現代の単語のつづりも、未来にはまた違ったものに進化してゆくのでしょう。
by hirochiki (2010-06-11 06:29) 

父ちゃん

ナメクジには気を付けていちごの収穫を週末
自分もやりたいと思います(^○^)

by 父ちゃん (2010-06-11 06:47) 

nyankome

Caelumさん
nice&コメントありがとうございます♪
1600年というと、日本では関ヶ原の合戦の年ですよね。
410年前ですから英語も現代と同じではなかった筈だと想像します。この辺りは、古い英語に詳しい方のコメントを待つことにします。
記譜法も時代とともに変化してきていますね。それでも410年前の楽譜が読めて演奏できるというのは素敵なことです。

あんれにさん
niceありがとうございます♪

やまがたんさん
niceありがとうございます♪

Daikonさん
コメントありがとうございます♪
古い楽譜を見ていると、いろいろな発見があって面白いですね。BOVCHET、そう言われるとそうですね。

hirochikiさん
nice&コメントありがとうございます♪
410年の間に記譜法も変わってきたことが分かります。
言葉も時代とともに変わっていくのは、どの国でも同じでしょうか。日本語の方が劇的に変わっているような気がしますが。
by nyankome (2010-06-11 06:49) 

yablinsky

このような古い楽譜は別の楽しみ方ができるようですね。なんだかなぞが隠されているような・・・・つづりも違う点が面白いです。
by yablinsky (2010-06-11 06:57) 

Cecilia

詳しい解説でわかりやすく楽しい記事でした。
これを見て演奏できたらなお楽しいのでしょうね。
"Flow my tears"、せめてギターを弾く人に伴奏してもらって歌いたいです。
ピアノでは気分が出ないですね。
by Cecilia (2010-06-11 07:48) 

バロックが好き

おはようございます♪
日本語で言う所の旧仮名使いなんでしょうかね~?
原書が手に入るなんて素敵ですね。
イラストや字形も現代と違って丁寧な感じがします。
by バロックが好き (2010-06-11 08:41) 

matcha

古い文章や古い楽譜、それにリュート・・。
現代の人が、16世紀・17世紀のものを観る・読む・使う・奏でる・・。
nyankomeさんと一緒に音楽の古史へ入り込んだような・・・
nyankomeさんは、音楽のインディージョーンズですね。

by matcha (2010-06-11 14:24) 

センニン

これ以上ない解説を読ませていただき、感謝です。
リュートを専門にされている方が思っている以上にいらっしゃるのだなと驚きました。
nyankome さんと 奇士 さんの見識に敬服します。

ところで記事を読んで現代のブランド「ブルガリ」の綴りを思い出しました。BVLGARI ですね。
気になったので Wikipedia で調べてみましたところ、こんな記述がありました。
 「BVLGARI」という表記は、古代アルファベットに「J」「U」「W」の3文字が無く、中世まで「U」は「V」と区別されていなかったことから、あえて当時の表記法に従ったものである。
この解説を読むと納得できますね。
by センニン (2010-06-11 20:38) 

nyankome

hakuさん
niceありがとうございます♪

父ちゃんさん
niceありがとうございます♪

yablinskyさん
nice&コメントありがとうございます♪
Bachの楽譜にはいろいろな謎が隠されているという話がよくありますね。
Dowlandでは聞いたことがないのですが、400年前の楽譜で演奏できるというのは素晴らしいことだと思います。

kaika-tさん
niceありがとうございます♪

Ceciliaさん
nice&コメントありがとうございます♪
この楽譜は綺麗なので十分見て演奏できます。
先日ショルのコンサートが放送されていましたが、チェンバロの伴奏でDowlandを歌っていました。十分雰囲気のある演奏でした。

takemoviesさん
niceありがとうございます♪

バロックが好きさん
nice&コメントありがとうございます♪
時代でいえば、江戸時代が始まる直前ですものね。
日本語の変化の方が大きいですね。
雰囲気のある楽譜ですね。
印刷物として残っていて、現代でもファクシミリで手に入るのはありがたいことです。

りぼんさん
niceありがとうございます♪

artfuldodgerさん
niceありがとうございます♪

ぷーちゃんさん
niceありがとうございます♪

今造ROWINGTEAMさん
niceありがとうございます♪

rosemaryさん
niceありがとうございます♪

でぶねこさん
niceありがとうございます♪

釣られクマさん
niceありがとうございます♪

matchaさん
nice&コメントありがとうございます♪
古楽復興に尽力された方々のお陰で、今こうしてヨーロッパの古い時代の音楽を、日本で演奏できます。とても素敵なことだと思います。
これほどのめり込むとは思ってもいませんでした。(^_^;)

miopapaさん
niceありがとうございます♪

めぇさん
niceありがとうございます♪

siroyagi2さん
niceありがとうございます♪

空飛ぶ食欲魔神さん
niceありがとうございます♪

キナコさん
niceありがとうございます♪

りんこうさん
niceありがとうございます♪

けいきちさん
niceありがとうございます♪

JBOYさん
niceありがとうございます♪

ほりけんさん
niceありがとうございます♪

小父蔵さん
niceありがとうございます♪

H Kosugeさん
niceありがとうございます♪

SORIさん
niceありがとうございます♪

水郷楽人さん
niceありがとうございます♪

アヨアン・イゴカーさん
niceありがとうございます♪

La_vbl_kokさん
niceありがとうございます♪

センニンさん
コメントありがとうございます♪
私もインターネットを通じて、奇士さんを始めとして多くの方から教えて頂いています。
私も朝刊でBVLGARIの刷り込み広告を見て、タイムリーだと苦笑しました。
>古代アルファベットに「J」「U」「W」の3文字が無く、中世まで「U」は「V」と区別されていなかった
勉強になります。
by nyankome (2010-06-13 15:27) 

nyankome

ユーフォさん
niceありがとうございます♪
by nyankome (2010-06-19 10:19) 

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